2014年5月12日月曜日

カフェレーサー時代の到来? #03

#01、#02とカフェレーサーをテーマに続けてきましたが、じゃあハーレーダビッドソン スポーツスターをカフェレーサーにカスタムするとどうか? という点について考察していきたいと思います。

個人的には、大いにアリだと思っています。

スポーツスターとは、訳すれば「スポーツする人」、「スポーツ野郎」みたいな意味で、1952年に登場したスポーツスターの始祖であるモデルKは、この頃 イギリスから輸入されてきたスポーツバイク(トライアンフやノートン、BSA)に対抗するために生み出されたもの。つまり、アメリカという広大な大陸を横 断するためのクルーザー型モーターサイクルを手がけてきたハーレーダビッドソンでしたが、これを機に街乗り、シティユースを目的としたコンパクトなネイ キッドバイクにも着手することとなったのです。そう考えれば、スポーツスターは誕生から今日に至るまで、アメリカにおいては“街乗り前提のスポーツバイ ク”ということ。そもそも、唯一のかフェレーサーモデル XLCRのエンジンもショベルスポーツ“アイアン”ですしね。

一方で、忘れてはならないのがモデルそのものの大型化です。特に2004年、スポーツスターはラバーマウント仕様とされ、フレームが太くなり、車重も増し ました。近年でもっとも大きな変化で、とりわけ1200モデルに至っては「限りなくダイナに近づいた」と言われることも。ややクルーザー化したスポーツス ター、それが近年のラバーマウント スポーツスターです。

カフェレーサーの主戦場は、ストリート、つまり都心です。となると、軽くて取り回しやすいに越したことはありません。そう考えると、平均で260キロ前後 にもなる車重のラバーマウントはタウンユースに向いているとは言い難い。「できない」とは言いません、僕自身、2008年式のラバーマウント スポーツスター XL1200Rに乗っているクチで、仕事柄、平日であっても乗る機会が多かったことから、街乗りであってもコントロールする技術はそれなりに身に付きまし た。そう、「できない」わけではなく「難しい」、「慣れが必要」という条件付きになると言いたいのです。

その点、2003年以前のエヴォスポーツは車重もノーマル時で230キロ前後と軽快なことから、ストリート向きと言えます。向き不向きで言えば、エヴォス ポーツの方がカフェレーサー向きと言えるでしょう。加えて、歴史の長さはもちろん、時代背景などから、ラバーマウントよりエヴォスポーツの方が専用カスタ ムパーツが多いので、カスタムという点においてもエヴォのバリエーションにはかないません。ラバーマウントで試みるとなると、パーツ単体の価格が高いこ と、また目指すカスタムに必要なパーツが少ないため、無ければワンオフになってしまうことなど、ハードルの高さを無視することはできませんね。

セパハン、バックステップ、ビキニカウルの3点をまず押さえるとすると、エヴォスポーツでなら社外パーツを探しても結構カンタンに見つけられます。特に好 みが分かれるのはビキニカウルでしょうか。やはりヘッドライトまわりは“バイクの顔”なので、ここは人によってガラッと印象が変わるでしょう。

カフェレーサー カスタムのスポーツスターには、以前担当していたハーレーダビッドソン専門サイト時代の取材等でいくつか出会ってきましたが、そのなかでグンを抜いて高い 人気を誇ったのがこれ、神戸のカスタムショップ ナイス!モーターサイクルが手がけたXL1200Sです。

Nice! Motorcycle XL1200S Cafe Racer
 バックステップでもないしビキニカウルも付いていませんが、まぁ人気は高かったです。ピーナッツタンクにシートカウル、そしてハーレーダビッドソンの象徴 であるナンバーワン ロゴを入れて、スポーツスター本来の雰囲気をそのままに、ハンドルをセパハンにしたナイス!流カフェレーサーの解釈といったところでしょうか。特に注目したいのはハンドルまわりでしょう。


スイッチボックスをグリメカのコンパクトなマスターシリンダーに換え、シンプルで無駄のないまとめ方とされています。とりわけ配線処理の細やかさは、さす がボヘミアン岡田といったところでしょうか。とてもリッターバイクとは思えないシンプルさとシャープなスタイリング。ただポンとパーツを付けただけでは、 こうはなりません。カスタムビルダーの真骨頂とも言える仕上がりでしょう。まぁ、かなり持ち上げていますが、別に岡田さんとはそれほど親しいわけではない ので、あしからず。

これはひとつの好例ですね。まるでヤマハ SRのようなシャープなまとめ方にできる、それがスポーツスター。ここまでやれれば、例えばスポーツスターミーティングの会場などで参加者を唸らせられる こと間違いなし。一方で、かなりの手入れをしなければシャープにできないのがラバーマウント。さっきからラバーの可能性をやたらと否定してばっかりです が、決してできないと言っているわけじゃありません。ただ、難しいと言いたいのです。

大きな問題となるのは、「フレームの太さ」「配線の多さ」「出っ張ったサイドカバー」の3点でしょうか。要するに、エヴォスポーツと比べても“余分なものが多すぎる”わけです。配線については、処理すれば他の場所へ逃がしてやれます。でも「フレームの太さ」と「出っ張ったサイドカバー」をどうにかしようと思ったら、素人では解決不可能なわけです。

思いつく方法を片っ端から述べると、「タンクをピーナッツにしてコンパクトなイメージにする」、「リアホイールを18インチ化して横から見たボッタいイ メージを払拭する」、「前後フェンダーをコンパクトなものに」、「全体のラインを意識した流麗なシートに」、「エアクリーナーもコンパクトなものに」、 「スイッチボックスはグリメカのマスターシリンダーに」、「ヘッドライトだって小さくしよう」、「サイドカバーは、可能なら板金でシャープなものを作る か、不可能なら存在そのものを無視する」など。要するに、各部位をコンパクトなものにして“シャープなイメージにする”という内容。このとおり、部位に よってはビルダーに頼まざるを得ないところがあります。当然軽量化だってせねばなりません。ラバーマウント スポーツスターのオーナーである僕自身も、ここまでこき下ろすと心苦しいものがありますが、実際のオーナーとして、こうした場面に何度も遭遇してきまし た。もし、今ラバーマウントに乗っておられるオーナーでカフェレーサー カスタムに挑みたいと思っている方がいらっしゃるなら、以下の2つからお選びになった方がいいと思います。

1, お金をかけてカスタムビルダーに依頼する
2, エヴォスポーツの中古車に買い替えてカスタムを再考する



スポーツスター カフェレーサーへのカスタムについて、先日取材でお伺いした神戸のシウン クラフトワークスのビルダー松村 友章さんがこんな風におっしゃっておられました。

「スポーツスターに、カフェレーサーはよく似合うと思うよ。反面、スポーツスターのチョッパーカスタムは似 合わへんと思うねん。フリスコはまだ分かる。でも、俺のなかでのチョッパーって、リジッドフレームがベースとなった三角形をどれだけ美しく描けているか、 三角形のシルエットがどれだけ見事か、そこなんよ。だから、スポーツスターをチョッパー化しても絶対カッコよくならへんし、スポーツスターにはストリート 系カスタム……カフェレーサーはやっぱりマッチするんよ」

なるほど、おっしゃるとおりです。カスタムのスタイルは千差万別、人の好み……というか、オーナー自身が「これでいいのだ!」と思えていればそれが正解な わけですが、あくまでカスタムビルダーやメディアという“第三者的立場から見たカッコよさ”というお節介な視点から言えば、似合っている度合いはカフェ レーサーやストリート系、ダートトラッカー系がベスト。せっかくのハーレーダビッドソンですから、誰が見ても「カッコいいねぇ!」と言ってもらえる愛車で ありたいところではあります。

それと、別の取材でお話を伺った業界歴長い御仁が、「カフェレーサー カスタムにもうひとつ条件を足すならば」というポイントを挙げてくださいました。それは、トリプルツリーの位置がフューエルタンクよりも下にある車両にこそセパハンが似合うというもの。


こんな感じでしょうか。ちなみにこちらはラバーマウント スポーツスター XL883。トリプルツリーがフューエルタンクの下にあるので無問題!と思ってしまうところですが、ひとつ大きな罠があるのです。それは、フューエルタンクのマウント位置。よく見ると、エンジンとのあいだに大きな隙間があることが分かります。これ、フューエルインジェクション化して配線が増えたこと、またフレームそのものが太く(ゴツく)なったことから、タンク位置がフレームオンしているかのような高さに設置されているのです。一昔前のスポーツスター……ショベルスポーツやエヴォスポーツではあり得なかったマウント位置。フォーティーエイトなどに用いられているピーナッツタンクならば違和感ないマウントになるのですが、もうちょっと真剣に作ってくれないかなぁカンパニーさん、と毒づきたくなる部位ですね。

結論としては、
・スポーツスターにカフェレーサー カスタムは似合う
・ただし、ラバーマウントよりエヴォスポーツの方がカスタムしやすい
・ラバーを否定するわけではないが、ハードルが高い(当然カスタム費も)

といったところでしょうか。スタイル上、それなりの無理を強いられる乗り味にはなりますが、一方で申し分ないカッコよさを手に入れられるのもまた事実。スポーツスター カスタムを楽しむうえで、ひとつのスタイルとして覚えておいていただければ幸いです。

どこかのカスタムショップがカッコいいカフェレーサー スポーツスターを発表したら、ご紹介させていただきますね。


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