2014年6月2日月曜日

B'z稲葉浩志のソロ曲『Stay Free』ロケ地解析

日本を代表する人気ロックバンド B'z。僕は『love me, I love you』(17作めシングル/1995年7月7日リリース)からの大ファンで、かれこれ20年近い付き合いになります。結成が1988年と、その活動も26年めを迎え、ギタリスト松本隆弘さんは53歳、ヴォーカリスト稲葉浩志さんは49歳に。そんな歳を感じさせない精力的な活動にはただただ感心させられるばかり。

そんなB'zですが、昨年からそれぞれソロ活動に専念。このふたりに関しては「ソロ活動=解散説浮上」の構図が成り立たないほど仲が良いのですが、興味深かったのがヴォーカリスト稲葉浩志さんのコト。ソロシングル『Stay Free』は作品としても素晴らしいのですが、特に「ええぇ!」と驚かされたのがPV(プロモーションビデオ)でした。

稲葉浩志 ソロ『Stay Free』PVのワンシーン
PVが流れるなか、稲葉さんがバイクでひたすら走り続けるのです。ライダーとして、B'zファンとして、そしてモーターサイクル業界のメディアとして、これは驚愕の作品と言えるもの。それぞれポイントを挙げながらご紹介させていただきます。


【Motorocycle】
[MV Agusta 750S]
もう、信じられないのひとこと。ベースは1972年式 MVアグスタ 750S。“バイクのワールドカップ”ロードレース世界選手権(現在のMotoGP)で数々のタイトルに輝いた名門メーカーで、この750Sはレーサーマシンの750cc並列4気筒搭載モデル。一台数百万円を超える“至高のバイク”で、この世に何台とありません。

Shinya Kimura / chabott engineering
そしてもうひとつの“信じられない”が、このバイクをカスタムした人。アメリカに居を構えるカスタムショップ chabott engineering(チャボエンジニアリング)の日本人ビルダー木村信也さん。文字どおり日本を代表するアーティストとも言える方で、僕らモーターサイクル業界で「彼を知らない人間はモグリ」と言っていいほどの著名な人物。それこそ、ブラッド・ピットやディビッド・ベッカムのバイクを手がけるビルダーとして知られているのです。そんな木村さんが手がけたMVアグスタ 750Sのカフェレーサー“blue-one”。世界の名だたるビルダーも注目する彼の一台、まさか稲葉さんが所有しているとは。しかも、それに乗ってPVって! ぶっちゃけ、これ一台1,000万円以上するはず……。


blue-one
よくよく調べると、B'zのファンクラブ会報誌「B'z Party」のなかで、稲葉さんが“もっとも尊敬する人物”として木村さんの名を挙げていたそうです。アメリカに赴いた際は、彼の工房にも顔を出しているとか。確かに10数年前、まだ日本にいた木村さんにヴィンテージハーレーのカスタム依頼を出しているんです。心の深いところに入り込む言葉を奏でる稲葉さん、きっと木村さんのなかの“何か”が強烈に刺さったんでしょうね。

余談ですが、その10数年前に稲葉さんからオーダーを受けた当時の木村さん、日本のポップミュージックにまったく感心がなかったため、直後のカスタムショーで仲間のビルダーに「なぁ、“びーず”って知ってるか?」と聞いていたとか。聞かれた面々も「さぁ?」という感じで、今僕がバイクの面倒を見てもらっている大阪のトランプサイクルの長岡守さんだけが「おい! それB'zやろ!」とツッコんだと聞きます(笑)。

超レアバイクをベースに、世界最高峰のカスタムビルダーが手がけたフルカスタム カフェレーサー。これだけで、このPVに登場しているバイクがどれだけスゴいものか、お分かりいただけたかと思います。


【Location】

撮影ポイント
主に東京都内のハイウェイと一般道で、とりわけモーターサイクル業界でも多用する撮影スポットが見受けられました。細かいところはさておき、大きく分けると、「レインボーブリッジ」「ゲートブリッジ」「首都高速道路」「大井埠頭」というところ。

▼首都高速道路
首都高は、撮影班(カメラマンを載せたサポートカー)と環状線をぐるぐるを走り回り、前から、そして後ろからの走行映像を撮ってから、流れで中央道へ向かう新宿線へと入っていったんじゃないでしょうか。普段日中だと首都高は渋滞しますから、まわりのクルマが少ないところを見ると、すっごい早朝にロケをやったのか、人が少ない大型連休に行ったのか、ってところでしょうか(ムービーのエフェクトでクラシカルにしているので、日中というところしか分かりません)。
左は谷町JCT、右は首都高 都心環状線 飯倉〜谷町間のトンネルですね
首都高 新宿線を八王子方面に向かっているよう
▼レインボーブリッジ
そしてレインボーブリッジとゲートブリッジ。こちらはド定番とも言える場所。特にレインボーブリッジは、首都高側を走れば景観が良いですし、一般道側ならちょうど良いカーブを描いているので、どちらも画になるんです。バイク雑誌やウェブのバイク記事の走行カットを見ると、レインボーブリッジが多用されているのに気付くかと思います。どちらも交通量が多い道ですので、タイミング次第ですね。
首都高 レインボーブリッジ
左はレインボーブリッジの一般道側でしょうか。右は首都高 芝浦PAへの入口
▼ゲートブリッジ
ゲートブリッジ
ゲートブリッジは、道自体はストレートながら、都心とは思えないスカっと抜けた画(え)が撮れるスポット。僕もモーターサイクル誌等の撮影で用いることが多い場所なので、見た瞬間に「あ!」と気付いちゃいました。潮風がダイレクトに吹きつけるところなので、風が強い日はバイクで走るのが若干怖かったりしますが、片方に東京湾が、もう片方に東京の街並みが見えながらのライディングが楽しめるので、ここを走るライダーも多く見かけます。

ゲートブリッジの若洲側
ゲートブリッジ 若洲側の交差点。ここでコーナーを曲がる稲葉さんが二度登場
▼大井埠頭
お台場とトンネルでつながる大井埠頭でも走行撮影がされていますね。スチールだとパッと見たときの背景がイマイチなんですが、こうしてイメージに振った映像として見ると、コンテナ群のなかを走るバイク……という感じで良い意味での殺伐感があると思います。“大都会をバイクで駆け抜ける”というテーマのなかの一枚としては面白い画ですよね。

大井埠頭のコンテナ群。左側の画は、おそらくGoProで撮影したものでしょう(笑)
大井埠頭〜台場をつなぐトンネル。右下の場所は、ちょうど台場側に出てくるところ

僕もモーターサイクルに関するムービーを撮影&編集することがあるのですが、撮影班を組む大変さはもちろん、何が難しいかって、編集するうえで必要になる“音楽”なんです。最近はフリーの音源(有料/無料とも)がネット上で手に入るようになってきましたが、イメージ性の強いムービーだと、その展開に合ったサウンドが入っていないと、仕上がったときに違和感が残るのです。

そういう意味で言えば、この『Stay Free』のPVは、そのサウンドありきでつくられているから、作り手側からすればイメージは沸きやすいですね。稲葉さんが登場し、稲葉さん(ソロ)のサウンドが奏でられ、稲葉さんが敬愛する人物が手がけたバイクが登場し、そんな稲葉さんのイメージをメインにまとめられている……いわば“稲葉浩志さんによるフルプロデュースムービー”というもの。バイクがカッコいい、モデルがカッコいい、サウンドもカッコいいと、限られた予算のなかでしこしこムービー撮影をする人間からしたら、すべて“反則技”以外のなにものでもありませんが(笑)。

そんな稲葉浩志さんのソロ曲『Stay Free』PV、こういう舞台背景なんかを知ったうえで見ると、また違った新鮮みがあるかも……?


 

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