2015年10月11日日曜日

ハーレー日本人デザイナー ダイス・ナガオ氏インタビュー #03

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――今回のキーであるリアショックの改善について、教えてください。
完全にブランニューですね。リアだけでなくフロントもカートリッジを一新しました。
39ミリのナローのままが、スポーツスターのカッコよさですから。
だから、中身に対してインプルーブしました。


――一方でフォーティーエイトは、フロントフォークが大幅にチェンジしましたね。
携わったベンは「見た目を変えたい」と言っていました。
というのも、フォーティーエイトはあの重量系ホイールに対して、41ミリフォークは華奢でした。だから、49ミリフォークの採用はフォーティーエイトにとって本来あるべき姿になった、という印象です。
トリプルクランプまで変わったフォーティーエイトですが、アイアンは違って、変える必要がないところを変えなくてもいいので、それぞれの対比が出た印象です。


――フォーティーエイトの場合、ステップ位置がフォワードコントロールのためライダー荷重がすべてリアサスペンションにかかってしまい、グレードアップしたといっても負担が大きいんじゃないかと思っていたんです。ところが、思っていた以上にしっかり仕事をするな、という印象でした。

もうひとつあるんです。それが新設計のシートです。アウトラインのシルエットは基本的に変えていないのですが、シート下にあったECMも移設し、シートベースもゼロから作り直し、シートそのものに厚みを持たせてました。厚みそのものは変わっていないんですが、中身の素材に遊びを持たせることで、クッション性を高めました。
サスペンション+シートの相乗効果で、乗り心地を向上させているんです。
フォーティーエイトだと、かなり薄いスタイルですので、あの薄さであれだけの効果が生み出せたのは大きかったと思います。

――素材はかなりやわらかい仕様ですよね。そこも見直したのでしょうか?
もちろんです。私自身もベストのシートとして出しました。


――タック&ロールデザインについて、インスパイアされたものは?
私の好きな世界観から、ですね。私が好きなカスタムバイクショーで見るオールドスクール系カスタムにあります。古くから伝わるスタイルでありながら、新しい要素がツイストされているものを手がけたい、それがこのタック&ロールというデザインでアウトプットされました。

シートだけでなく、ラウンド型エアクリーナーやパンチアウトされたエキゾーストカバーなど、全体的に一体感をもってドロップしました。

――新タンクデザインのコンセプトを教えてください。
『アメリカーナ』ですね。アメリカの国鳥であるこのハクトウワシをデザインとして取り入れられるのは、アメリカのなかでも限られた企業だけですし、ハーレーダビッドソンにはその資格があると思います。「イーグルを使えるのは俺たちだ」と、臆せずデザインしました。これで、アメリカを象徴できたと自負しています。

ショベルヘッドのFXローライダーなどに見られた、黄金のイーグルの彫刻をご存知かと思います。あれもそうしたアプローチのひとつですが、モダンなバイクにそのまま取り入れちゃうとカッコ悪いですよね。だからそのまま描くのではなく、新しい解釈でのイーグルをデザインすることで、『アメリカーナ』を表現し、フリーダムと力強さの象徴とし、アイアンシールドでその哲学を守ることを表現しました。
説明せずとも、「ハーレーダビッドソンだ」ということが伝わるインパクトを持たせたかった。

――このグラフィックが取り入れられたカラーは、デニムブラック、オリーブゴールド、チャコールパールの3カラーです。
俺のおすすめは、チャコールパールです。あのカラーだとボディのブラックが映えると思います。黒が際立ってこそアイアンだと思うので、あのコントラストはいいですね。
オリーブゴールドもこの黒いボディによく似合っていると思います。1970年代アメリカにあったマッスルカーの、上級グレードじゃないタイプの色によく似ていますよね。RTとはSSとかSEとかではなくて、ベーシックバージョンの雰囲気に近いカラーなので、クリアがかかっているところがイイな、と思って見ています。

――どこの企業もイーグルを使えるわけではない。そこに100年を超える歴史を持つハーレーの偉大さがあると思います。特にハーレーは、四輪など大きな企業母体に支えられる他メーカーと違い、バイクだけで今日まで歩んできた。これはすごいことだと思うんです。
そういう意味ではピュアなメーカーだと思います。AMF時代には望んでいないものを作っていましたが、嫌々感は出ていましたからね(笑)。ウィリーGらによるバイバック以降、モーターサイクル一本でやってきているわけですから、ハーレーが本当にやりたいのはモーターサイクルなんだと感じ入りますね。

――日本では、若者のバイク離れについて業界から嘆きの声が聞こえているのですが、アメリカではどうなんでしょうか?
アメリカと比べると、日本の方が若者向けのバイクが多く、盛んな印象がありますよ。
アメリカでまず求められるのはクルマ。街から街への距離が日本の比ではないので、クルマなくして生活が成り立ちません。そのなかでオートバイとなると、移動手段ではなく趣味性の高いものとして見られています。ましてハーレーほど高価になると、若い人ではなかなか手が出せない。

モーターサイクルに対する捉え方としては、「生活に余裕がある人が乗るもの」という見方だと、アメリカの方がその意識が強いように思えます。日本の方が、もっと気軽に乗れる環境のように思えますね。

――日本の方が、若い人がバイクに乗っている印象が強い?
そう思います。ハーレーはやはりプレミアムブランドという位置づけですから。だからこのスポーツスターは、そうした若い人向けのモデルとして親しんでほしいと思います。


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